
こんにちは! 某自動車ディーラーサービス勤務30年目のたけぞうです。
皆様、車検や点検の時に整備工場のスタッフからこのような話しを聞いた事があるでしょうか?
「〇〇ブーツが切れており、中のグリスが流れ出ています。修理が必要です。」
「〇〇ブーツ切れの為、車検不合格となってしまいます。交換が必要です。」

普通に乗れていたのに、今すぐ修理が必要?説明を聞いてもどこの箇所だか、さっぱりわからないし・・

調子良く使えてるのに車検に通らない?修理金額もかかるなんて・・

おっしゃられることは、ごもっとも・・ ただし安心・安全にクルマを使っていただくためには必要な整備になります。
クルマを乗り続けていると、いつかは必ず交換が必要になる「〇〇ブーツ」の交換・・ ブーツと言っても何種類かございます。
今回は前輪駆動車(FF車ともいいます)、前側のタイヤが駆動し、かつ左右に操舵されるクルマに使われているドライブシャフトブーツについて解説します。必要なタイミングでブーツ交換を実施しないと、ドライブシャフトごと交換をしなければならない事になり、余計に修理費用がかかってしまう場合がございます。
ドライブシャフトブーツの役割や日常で気を付ける事は何か?
今回の記事を参考にして頂き、安心・安全なカーライフの一助となれば幸いです。
そもそもドライブシャフトって何? どこで使われている?

ドライブシャフトとは、タイヤへ動力を伝えるシャフトとざっくり覚えておいてください!
クルマが動く・走る工程をおおまかに説明すると、エンジンで動力を作りだす➡トランスミッションで変速する➡ドライブシャフトがタイヤへ動力を伝える、となります。
ドライブシャフトはクルマを走らせる為の動力を伝え、タイヤと同じ回転数で回転するという非常に負荷が大きく、重要な部品となります。
そんなドライブシャフト単体での画像がこちらです。

ジョイント部と呼ばれる黒いブーツで覆われている箇所が上下左右に可動するようになっています。動力を伝えるだけならばこのようなジョイント部を設ける必要も無いのですが、道路には凹凸もありますし、前輪駆動車のドライブシャフトはハンドル操舵をする度にタイヤ側ジョイント部を可動できるようにする必要があったりします。
ドライブシャフトに求められることとは・・
- 回転動力をタイヤに伝え、実際にタイヤを駆動させること。
- 道路の凹凸やサスペンションの動きに応じて、可動すること。
- 前輪駆動車(FF車)の場合、ハンドル操舵をした時にタイヤ側ジョイント部(アウター側)がタイヤ切れ角度並みに可動すること。
ドライブシャフトの役割や構造など、ある程度イメージ出来たでしょうか?続いてドライブシャフトブーツの解説をしていきたいと思います。
ドライブシャフトブーツとは?
ドライブシャフトの構造でジョイント部を覆っている黒い蛇腹状のブーツがあったと思います。これこそが「ドライブシャフトブーツ」になります。役割・材質・求められる事をそれぞれ解説します。
役割
ドライブシャフト・ジョイントベアリング部分を覆うことによってジョイント部の摩擦・摩耗を防ぐ為のグリスを保持する、またジョイントベアリング部分を雨や砂などからまもる。
ブーツ単体の画像がこちらです。

ブーツを蛇腹形状にする事により、走行中(ドライブシャフト回転中)のジョイント部分可動に対応できるようになっております。
ドライブシャフトブーツとは2種類ありまして、アウターブーツとインナーブーツがあります。
- アウターブーツ・・・タイヤ側(外側)のブーツの事。走行中にハンドルを操舵すると、ドライブシャフトが回転しながらタイヤ側のジョイント部分も動かされます。この動きに合わせてブーツ蛇腹部分が伸びたり、縮んだりする事によって、動きに対応できるようになっております。
- インナーブーツ・・・トランスミッション側(内側)のブーツの事。アウターブーツほど伸縮の動きはありません。アウターブーツと比較するとブーツ自体の負担は少ないといえます。
材質と特徴
アウターブーツとインナーブーツで材質を樹脂製とゴム製に使い分ける車種が主流になっております。
アウターブーツ・・・樹脂製が多い。ゴム製と比較すると耐久性が格段に上がっているので、負担の大きいアウターブーツに採用されています。まれにゴム製。
インナーブーツ・・・ゴム製が多い。
ブーツが切れてしまう原因は?
ここでは、ブーツが切れてしまう原因を考えてみましょう。
- 繰り返される伸縮による疲労・・・走行中は絶え間なくブーツは伸縮しておりますので、徐々にその機能が低下してしまいます。この現象を疲労と呼んでおります。樹脂・ゴムの疲労は緩やかに進行していき、最初は小さいヒビ割れから始まり、破断に至る疲労破壊となってしまいます。
- 経過年数による劣化・・・樹脂・ゴムの経年劣化は避けられません。古い輪ゴムの弾力が失われて突然切れてしまうのと同じ現象です。
- 寒さによる劣化・・・常温では弾力性のある樹脂・ゴムも低温化では硬化してしまいます。その状況での使用期間が長いと劣化が進行してしまいます。
- 熱による劣化・・・真夏の道路を想像してみて下さい。日中に樹脂・ゴムが熱せられて、夜に冷される。この繰り返しで劣化が進行してしまいます。
- 長期間の駐車・・・あまりにクルマを動かさずにいると、樹脂・ゴムもその状態で硬化していってしまい、樹脂・ゴムの弾力が失われてしまいます。
なぜ修理交換が必要なのか?
ドライブシャフトブーツは、このグリスが充填された金属のジョイント部を柔軟な動きでカバーして、摩耗・損傷をさせないようにグリスを保持・飛散を防ぎ、外部から進入するホコリ、石、水といった異物から守る役割をしています。
ドライブシャフトブーツが切れたまま運転していると、亀裂からグリスが漏れ出し、外部からの異物がジョイント部に入り込んでベアリングを傷つけてしまいます。
こうした摩耗・損傷が進むと、ジョイント部にガタが生じ、異音を発生させる一因となります。最悪の場合、ベアリングを分解・整備、ドライブシャフトごと交換という事態にもなりかねません。
余計な出費を避けるためにも、ドライブシャフトブーツのひび割れ、グリス漏れを発見した場合はすぐに対策を打つことが重要です。
ブーツ切れだと車検に通らない?
車検ではクルマの下回り、足回りも検査項目となっています。車検の検査場では検査台に車を乗せ、検査官が車体の下側から点検ハンマーを使いながら各部位の緩みが無いか、その他下回り・足回りをチェックします。
具体的に見る部分は、オイル漏れやボルトの緩みの有無、ブーツ類の切れがないか、などになります。
ブーツの切れが見つかると保安基準適合外となり、再検査を要求されます。ブーツを新しいものと交換するか補修するなどして整備後に再度車検を受けることになります。
ドライブシャフトブーツには種類がある?

ドライブシャフトブーツ交換の見積もりを頼んだら、補修ブーツは2種類あって、修理方法を選べますと言われたけど・・どういうこと??

車種によっては補修部品として分割式ドライブシャフトブーツが設定されていることがございます。以下で解説いたします。
ドライブシャフトブーツには補修部品として、新車時から装着されているブーツとは別の部品が設定されている事があります。ブーツ自体が分割しているか、非分割式かの違いになり、ここでは分割式ドライブシャフトブーツ・非分割式ドライブシャフトブーツと明記しておきます。この2種類のブーツを使用しての修理交換にはどちらもメリット・デメリットがあります。
部品代 | 作業工賃 | 耐久性 | |
非分割式ドライブシャフトブーツ | ◎ | △ | ◎ |
分割式ドライブシャフトブーツ | 〇 | ◎ | △ |

この2種類のドライブシャフトブーツを比較した時、作業工程で最も異なる点はドライブシャフトを取り外すかどうかです。このドライブシャフトを取り外す作業がクルマによっては非常に作業時間がかかってしまい、どうしても作業工賃が上がってしまいます。
非分割式ドライブシャフトブーツとは新車時に装着されている純正ドライブシャフトブーツと同じ形状のブーツを指します。このブーツを使用するメリットは耐久性です。使用する部品が整備工場によって純正品か社外品かになる場合がございますが、どちらにしても部品構造上、耐久性は高いです。
ドライブシャフトブーツは車検の点検項目でもあり、年数経過や走行距離過多によってどうしても定期的な修理が必要な箇所、つまりクルマを乗り続ければいつかはブーツ交換が必要になってきてしまいます。その時の作業工程を簡略化するために分割式ドライブシャフトブーツがございます。
分割式ドライブシャフトブーツのメリットは作業費用が安く抑えられる事です。部品代は純正部品に比べ若干高い傾向にありますが、ブーツ交換工賃に関しては分割式ドライブシャフトブーツの方が安くできます。ただし非分割式ドライブシャフトブーツと比較すると耐久性はかなり劣ってしまいます。
分割式ドライブシャフトブーツの耐久性が低いというのは、構造上割れている部分の接合・接着部からグリスがにじみやすいということです。ドライブシャフトは高速で回転しながら、雨・雪・砂などに常にさらされる箇所なので、分割式ドライブシャフトブーツだと割れている部分の接合・接着力をどれだけ高められるかが耐久性向上のポイントになり、商品によって差がでる所になります。商品によってはブーツの割れている部分に接着剤を塗布しながら、素材を熱で溶かして溶着することにより強固な接合力を得るタイプの商品がございます。
ドライブシャフトブーツの劣化を防ぐ為には?
残念ながらクルマのあらゆる箇所は日々少しずつ劣化していってしまいます。その劣化をどれだけ緩やかに出来るかでクルマの使用年数や維持・メンテナンス費用が変わってきます。日常使用の中で、少しだけ気を付けながら良い状態を維持し続けていきましょう。ドライブシャフトブーツの劣化を防ぐ為に気を付けるポイントとしては以下がございます。
- 駐車時にはハンドルを真っ直ぐにする
- 急なハンドル操作やむやみにハンドルを目一杯切らないようにする
駐車時にはハンドルを真っ直ぐにしておきましょう。ハンドルを切った状態というのはアウターブーツに拡がっている所と縮まっている所が発生してしまい、樹脂・ゴムブーツに少なからず負担がかかっております。この状態で時間が経過すればするほどブーツの劣化が進行してヒビ割れが発生していってしまいます。些細なことですが、タイヤが曲がった状態での駐車回数を減らしてブーツへの負荷の蓄積をなくしていきましょう。
急なハンドル操作を行うとアウターブーツの伸縮もそれに合わせて速くなってしまいます。また必要以上にハンドルを目一杯切る操作もアウターブーツが余計に拡がったり縮んだりするので、それぞれ疲労劣化の原因になります。いずれにしても急のつく運転をさける事(急ハンドル・急発進・急加速)がポイントになります。
ちなみにクルマの車高を変える、ローダウン(車高を下げる)やリフトアップ(車高を上げる)などをすると、ドライブシャフトブーツの交換時期に影響がでる事があります。これはクルマによって良くも悪くもなる場合がありますので、クルマを改造したり、改造してあるクルマを購入した時はドライブシャフトブーツだけに留まりませんが、気を付けた方が良いと思います。
まとめ
今回はいつか交換が必要になるドライブシャフトブーツについて解説しました。頻繁に交換する部品ではないので、聞いた事の無い方もいらっしゃると思いますが、クルマを安全・安心に使う為には定期点検すべき箇所になります。クルマの整備が必要な時に適切な対応方法で計画的に行えれば、クルマにとっても、ご自身の予算組みも楽になるのではないでしょうか?
今回は以下の内容について解説致しました。
- ドライブシャフト及びドライブシャフトブーツとは?
- ブーツが切れてしまう原因は?
- なぜ修理交換が必要なのか?
- ブーツ切れだと車検に通らない?
- ドライブシャフトブーツには種類がある?
- ドライブシャフトブーツの劣化を防ぐ為には?
ブーツが切れただけでは、運転していても気が付く事が出来ないので、定期的に下回りの点検を実施する事をお勧めします。
皆様が充実したカーライフをお送り頂けるように・・
今回もご一読頂き、ありがとうございました。